作家デビュー三十周年を記念して

 宮部みゆきの「宮部みゆき全一冊」を読了した。著者は直木賞作家で、ミステリー、時代劇、ファンタジー等、レパートリーの広い作家である。本書は、著者の作家デビュー三十周年を記念して2018年に刊行されたもので、単行本未収録の掌編小説や対談等が多数収録されている。
 本書の冒頭に掲載されているロングインタビューでは、著者の著名な作品十一冊の執筆の経緯が書かれているが、私は個人的にはそのインタビューが非常に参考になった。例えば、「三島屋変調百物語」シリーズは現時点で第九巻まで刊行されているが、第十巻から物語の聞き手が代わる気配がある。そのことに関して著者は、シ