「あの曲」だけは弾いてはいけない

時代は昭和63年バブル期。銀座のさえないキャバレーで演奏する若きジャズピアニストが主人公。銀座界隈を牛耳るヤクザの親分しかリクエストしてはいけないあの曲を、駆け出しのピアニストがそうとは知らずに弾いてしまった事から、物語はスリリングに転がりはじめます。

キャバレーの雇われミュージシャンたちは、まったく聴く気のないお客たちを相手に演奏する自らの存在を花のない花瓶のようだと例えて、自虐的な日々を送っていますが、その夜は店の忘年会。例の曲の噂を聞きつけて怒り狂った親分も店に現れました。そしてお客が帰った閉店後の忘年会、ミュージシャンたちはこの夜とばかりに