二人の公孫龍

 宮城谷昌光の「公孫龍 巻三 白龍篇」を読了した。著者は、直木賞作家で、主として中国および日本の歴史小説を手掛けている。本書は、古代中国の戦国時代に生きた公孫龍という人物の生涯を描いた歴史小説である。
 本書の主人公である公孫龍は、史実ではその生い立ちについては不明であるが、本書では周王朝の最後の王となった赧王の王子の稜であったと設定している。彼は人質として燕に送られるが、それが彼を謀殺するためであると知り、王族の身分を捨て、一介の商人として生きるために公孫龍を名乗ったこととしている。公孫龍というと名家の筆頭で「白馬非馬説」を唱えた学者が思い浮かぶが、