「宮城谷昌光」の日記一覧

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三顧の礼

 宮城谷昌光の「諸葛亮(上、下)」を読了した。著者は直木賞作家で、主として中国および日本を舞台とした歴史小説を手掛けている。本書は、三国時代きっての天才軍師と言われる諸葛亮の評伝小説である。なお、亮が諱(本名)であり、一般に有名な孔明は字(あざな)である。  諸葛亮は建興12年(234年)に徐州琅邪郡陽都県で諸葛珪の次男として生まれ、兄に諸葛瑾、弟に諸葛均がおり、二人の姉がいる。志学と言われる…

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二人の公孫龍

 宮城谷昌光の「公孫龍 巻三 白龍篇」を読了した。著者は、直木賞作家で、主として中国および日本の歴史小説を手掛けている。本書は、古代中国の戦国時代に生きた公孫龍という人物の生涯を描いた歴史小説である。  本書の主人公である公孫龍は、史実ではその生い立ちについては不明であるが、本書では周王朝の最後の王となった赧王の王子の稜であったと設定している。彼は人質として燕に送られるが、それが彼を謀殺するた…

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無垢な人を支えた男達

 宮城谷昌光の「三国志名臣列伝-蜀篇-」を読了した。著者は直木賞作家で、主として中国および日本を舞台とした歴史小説を手掛けている。本書は、「めずらしいほど無垢な人」と部下に慕われた劉備に従った、七人の男達の評伝である。  「関羽」:関羽は若い時に、人助けのために故郷の河東郡解県で土地の顔役を斬って出奔したために、元の姓名は伝わっていない。彼は商隊の警護人をして幽州涿郡に来た時に簡雍と知り合い、…

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二帝の間を往来する

 宮城谷昌光の「馬上の星-小説・馬援伝-」を読了した。著者は、直木賞作家で、主として中国および日本の歴史小説を手掛けている。本書は、後漢建国の功臣の一人である馬援の生涯を描いた歴史小説である。  馬援は長安にほど近い右扶風茂陵県の生まれであり、遠祖に馬服君と名乗った戦国時代の趙の将軍の趙奢がいたため、彼の一族は馬氏を姓としている。馬援は四人兄弟であるが、彼が十二歳の時に父親の馬仲が亡くなったた…

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武霊王の最期

 宮城谷昌光の「公孫龍 巻二 赤龍篇」を読了した。著者は、直木賞作家で、主として中国および日本の歴史小説を手掛けている。本書は、古代中国の戦国時代に生きた政治家、思想家である公孫龍の生涯を描いた歴史小説である。  本書の主人公である公孫龍は、名家と呼ばれる思想家であることは伝わっているが、史実ではその生い立ちについては不明である。しかし、本書では彼は、周王朝の最期の王となった赧王の王子の稜であっ…

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劉備抹殺を献言した男

 宮城谷昌光の「三国志名臣列伝-魏篇-」を読了した。著者は直木賞作家で、主として中国および日本を舞台とした歴史小説を手掛けている。本書は、三国時代の幕開けとなった黄巾の乱の吹き荒れる後漢末期から三国時時代の魏を彩る、七人の脇役達の評伝である。  「程昱」:程昱は初めは程立という名前であった。黄巾の乱の際、故郷の兗州東阿県の県丞の王度が叛乱を起こした時、程立は薛房達とともに県城を奪い返そうとしたが…

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父に捨てられた王子

 宮城谷昌光の「公孫龍 巻一 青龍篇」を読了した。著者は、直木賞作家で、主として中国および日本の歴史小説を手掛けている。本書は、古代中国の戦国時代に生きた政治家、思想家である公孫龍の生涯を描いた歴史小説である。  本書の主人公である公孫龍の生い立ちについては、史実ではその詳細が不明である。しかし、本書では彼は、周王朝の赧王の王子であったと設定している。本書では述べられていないが、赧王は周王朝で在…

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著者別インデックス:国内(宮城谷昌光)

1.天空の舟-小説・伊尹伝- (1990.07) 2.王家の風日 (1991.02) 3.侠骨記 (1991.02) 4.石壁の線より (1991.07) 5.夏姫春秋 (1991.08) 6.孟夏の太陽 (1991.09) 7.春の潮 (1991.12) 8.会社人間上昇学(改題:歴史の活力) (1992.02) 9.花の歳月 (1992.02) 10.中国古典の言行録 (1…

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人間としての孔子

 宮城谷昌光の「孔丘」を読了した。著者は、直木賞作家で、主として中国および日本の歴史小説を手掛けている。本書は、論語を説いた聖人君子の孔子ではなく、不遇や失敗にも負けず、春秋時代の中国を流浪しながら弟子達の教育に心血を注いだ人間としての孔丘を描いた歴史小説である。  物語は孔丘の母親の顔徴在の埋葬の場面から始まる。顔徴在が孔丘の父親の孔紇(叔梁紇)の許に嫁いだのは彼女が十六歳の時であり、その時孔…

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狡兎死して

 宮城谷昌光の「湖底の城-呉越春秋-九巻」を読了した。著者は、直木賞作家で、主として中国および日本の歴史小説を手掛けている。本書は、春秋時代の呉越の争いを描いたものであり、シリーズ完結の最終巻である。なお、本シリーズの主人公は、前半は呉の名将伍子胥であるが、後半は越の名軍師范蠡の占めるウェイトが高くなっている。  楚から戻った范蠡は越の富国を図る。越王句践が呉の王宮に送られてから二年が経ち、越は…

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三国志前期を彩る人々

 宮城谷昌光の「三国志名臣列伝 後漢篇」を読了した。著者は直木賞作家で、主として中国および日本を舞台とした歴史小説を手掛けている。本書は、三国時代の幕開けとなった黄巾の乱の吹き荒れる後漢末期時代を彩る、七人の脇役達の評伝である。  「何進」:何進は荊州南陽郡宛県で屠殺業を営む何真の息子であったが、母親が亡くなったため、父親は後妻の興氏を迎える。興氏には何進の義弟になるの連れ子の何苗(朱苗)がいた…

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草原の風に吹かれて

 宮城谷昌光の「呉漢(上、下)」を読了した。著者は、直木賞作家で、主として中国および日本の歴史小説を手掛けている。本書は、後漢の光武帝に仕え、後世に雲台二十八将の第2位に序せられた名将呉漢の生涯を描いたものである。  南陽郡宛県の貧家に生まれた呉漢は、彭氏の農場で賃作をしている時に彭氏の客の潘臨に出会うが、彼が呉漢を推奨したことから、彭氏の跡継ぎである彭寵は呉漢を注目することになる。ある時呉漢は…

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会稽の恥

 宮城谷昌光の「湖底の城-呉越春秋-八巻」を読了した。著者は、直木賞作家で、主として中国および日本の歴史小説を手掛けている。本書は、春秋時代の名将伍子胥の生涯を描いたものである。  呉王夫差の侵攻を予期する越王夫差は、逆に呉を侵攻するための軍船の建造を開始するが、完成した船を水に浮かべず、山林に隠す。それを知った伍子胥は、呉軍が越に侵攻した隙に、越軍は太湖を渡り、呉の首都の姑蘇を急襲しようとして…

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臥薪嘗胆

 宮城谷昌光の「湖底の城-呉越春秋-七巻」を読了した。著者は、直木賞作家で、主として中国および日本の歴史小説を手掛けている。本書は、春秋時代の名将伍子胥の生涯を描いたものである。  後に越王句践の軍師となる范レイは、かつて本シリーズに登場し、盗賊に襲われて殺害された宛の大富豪范氏の長子である。范氏はかつて范レイと魯の富豪の施氏の娘の西を婚約させたことがある。しかし、范レイは一度西施に会いに行った…

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柏挙の戦い

宮城谷昌光の「湖底の城−呉越春秋−六巻」を読了した。著者は、直木賞作家で、主として中国および日本の歴史小説を手掛けている。本書は、春秋時代の名将伍子胥の生涯を描いたものである。  楚の令尹子常の強欲が、楚に隣接する小国の蔡と唐とを離反させる。一度は大国の晋を頼った蔡であるが、楚に攻められて亡国の淵に立ち、呉に救援を求めたため、呉王闔閭は遂に征楚の軍を起こす。直接の敵は全て世を去っているが、伍子胥…