連載:相続トンネル

実家じまいで見つけたのは

『8月6日午前八時6分。「課業はじめ」の下令を待って全員整列して待機中、突然すざまじい大閃光が走り、たちまち大轟音と共に兵学校後方の古鷹山のかなたに、天に届かんばかりの巨大なピンク色のキノコ雲を見る。広島の陸軍弾薬庫の爆発か。夕刻近く火傷者が能美島、高田にも運び込まれ…』

実家の片付けで段ボール箱の奥にしまい込まれた冊子を見つけ、家に持ち帰って読んでみたら、父のクラスメートMさんの記したものだった。
満州の高等学校から東京大学に入学し昭和18年学徒出陣で海軍に入団まで父と一緒の経歴だ。そこから先、いくら水を向けても「通信士として呉で働いた」としか