時を超えて

「お母様はお元気ですか?」
聞き覚えのある言葉にハッと 夢から覚めた。
そして、切ない気持ちになりながら 仕事に向かった。

「お母様は、お元気ですか」
八十代の患者さんに声をかけられた。
いつもは、お小言しか言わないおじいちゃんが私に笑顔で声をかけてきた事に驚いた。
「母ですか?元気ですよ。」
また、何をきいているんだ?と不審に思い、つっけんどんな調子で返した。
「昔、あなたの家の近くの軍隊の八十六連隊におってな、あんたにそっくりな人が紡績工場におったんや。だから、絶対娘さんだと思っておったんや。」
と、おじいちゃんは話し始めた。