『万葉集』を訓(よ)む(その二千五十九)

 今回は、一六九二番歌を訓む。題詞に「紀伊國作歌二首」とあり、本歌と次歌(一六九三番歌)の二首は、「紀伊國(きのくに)にして作(つく)る歌(うた)」である。
 本歌は 写本に異同はなく、原文は次の通り。

  吾戀 妹相佐受 
  玉浦丹 衣片敷 
  一鴨将寐

 一句「吾戀」は「吾(わ)が戀(こ)ふる」と訓む。「吾」は下に格助詞「が」を補読して「吾(わ)が」と訓む。「吾(わ)」は自称で、作者をさす。「戀」はハ行上二段活用の他動詞「こふ」の連体形「戀(こ)ふる」。
 二句「妹相佐受」は「妹(いも)は相(あ)[逢]はさず」と訓む。「妹」は