『万葉集』を訓(よ)む(その二千六十二)

 今回は、一六九五番歌を訓む。題詞に「泉河作歌一首」とあり、本歌は、「泉河(いづみがは)にして作(つく)る歌(うた)」である。「泉河(いづみがは)」は、一六八五番歌の題詞に既出。阿蘇『萬葉集全歌講義』の注に「泉川 現在の木津川。奈良県の宇陀に発し、伊賀を過ぎ、京都府南部の木津から北流して、木津川市・綴喜郡井手町の西を北流し、城陽市の南西を廻って、八幡市北で淀川に合流する川。この川の一帯はもと泉の郷と呼ばれた。」とある。
 写本の異同は、二句四字目<川>。これを『神宮文庫本』『細井本』『寛永版本』は「河」とするが、他の写本いずれも「川」とあるので、これを