『万葉集』を訓(よ)む(その二千六十三)

 今回は、一六九六番歌を訓む。題詞に「名木河作歌三首」とあり、本歌〜一六九八番歌の三首は、「名木河(なきがは)にして作(つく)る歌(うた)」である。同じ題詞の歌として、一六八八番歌があった。阿蘇『萬葉集全歌講義』に「名木川 既出、一六八八。木津川が巨椋池に注いでいたころの流入部の木津川の称。和名抄に久世郡那紀の地がある。一説に、宇治市伊勢田町のあたりという(講談社文庫『万葉集事典』)。」とある。
 写本に異同はなく、原文は次の通り。

  衣手乃 名木之川邊乎 
  春雨 吾立沾等 
  家念良武可

 一句「衣手乃」は「衣手(ころもで)の