『やさしさごっこ』

「給食費がまだの人」

小6のとき毎月、黒板にわたしの名前が書かれた。

そんな日はいつも母に文句を言った。

終始 黙って聞いた後、母は決まってカレーライス
を作り始めた。

牛肉の替わりにチクワを入れるのが母の工夫。

もやもやの1日も至福の晩餐(ばんさん)へと
変わった。

慎(つつ)ましい日々であったが不安も悲観もなく
過ごせた子供時代だった。

やがて社会に出て悟った。

両親は必死で世間をさえぎる壁になっていたのだと。

夭逝(ようせつ)した息子に問うてみた。

「せいちゃん。俺でよかったかのう」

カテゴリ:日常・住まい