釣りのある日。
右側の人が、実に良く釣る。
何度目か 視線が合った時、さおを置き、
すたすたとやって来た。
「あんた釣れんなあ」
「はぁ」
「どれ見ちゃろう」
仕掛けを一目見て
「これじゃ効率が悪いわ」
するするっと引き返し、自分のを持ってきた。
「わしが作ったんじゃ。あんたにあげよう」
手際よく付け替えると釣れるコツまで教えてくれた。
礼をいい、名前を聞くと
「名乗るほどのもんじゃなか」
と笑うのみ。
苦心して身に着けたコツを惜しげもなく他人へと。
こんな珍しい人もいるんだと敬服したという。
やがて みるみる 釣れだして、ま