『万葉集』を訓(よ)む(その二千七十九)

 今回は、一七一二番歌を訓む。題詞に「登筑波山詠月一首」とあり、本歌は「筑波山(つくばやま)に登(のぼ)りて月(つき)を詠(よ)む一首(しゆ)」である。「筑波山(つくばやま)」について、阿蘇『萬葉集全歌講義』は、次のように注している。

 筑波山 茨城県つくば市にある八七七メートルの山。頂きは男体・女体の二峰に分れる。歌垣の行われた山として知られている。都人もこの地に来れば筑波山に登って楽しんだことが万葉の歌により知られる。高橋虫麻呂が夏に検税使大伴卿を案内して登った歌(本巻・一七五三、四)があり、季節外れの雪解けの道を登った丹比国人の歌(3・三八二、三