書き換えられた遺言書

 マシュー・ヘッドの「贖いの血」を読了した。著者は美術史研究家で、余技でミステリーを書いており、生没年は1907年-1985年である。本書は1943年刊行の著者のデビュー作で、大富豪の老婆の殺人事件を描いたミステリーである。本書の視点人物は、ハーバード大学で美術史を学んだ二十五歳の青年のビル・エクレンである。
 主人公のビルは大恐慌のために定職に就けず、最近はカンサス州のウィチタで一年間、大学で美術史の教鞭を執っていた。そのビルに友人のトム・シェーンから、サンフランシスコの近郊に住んでいる大富豪のジムソン夫人の期間限定の画家兼美術館管理人の仕事の紹介があ