連載:

「いつ死んでもいい」

地味ないでたちだ。大き目のリュックに紐付きの帽子、長袖シャツとパンツは特に目立った特徴もない。

辺りはすっかり暗くなり、桜の下では黒っぽいスーツを着た男性ばかりのグループが宴会をしている。

似ている。
「あのー、先程の方ですよね」

お濠の方を見ている後ろ姿に声を掛けた。こちらを向いた顔は間違いない。愛子様を一緒に見た「桜オバサン」だ。

行く方向が同じと分かり一緒に歩き出した。
「ここで渡った方がいいわ」
広い道路を渡ると直ぐに国立劇場の赤い掲示板が見えて来た。

桜は一足早く満開だ。以前一本だけ早く咲いているのを見たが、建物の前庭には沢山の桜が植