寡作の怪奇幻想小説作家

 小田雅久仁の「禍」を読了した。著者はファンタジー、SF畑の小説家であり、2009年、「増大派に告ぐ」で第21回日本ファンタジーノベル大賞を受賞して作家デビューしている。本書は怪奇幻想小説の短編集である。
 「食書」:本編の語り手はお腹の弱い小説家である。ショッピングモールの書店で便意を催した彼は、書店のすぐ横の鍵の掛かっていなかった便所に飛び込むが、そこには中年の小太りな女性の先客がいた。その女性は便器の蓋を下ろし、その上に座っていたが、何と単行本を開き、そのページを引き千切ってむしゃむしゃと食べていた。彼女は弁解して逃げ出そうとした彼に、「絶対に食べ