未完の名作

 芦辺拓/江戸川乱歩の「乱歩殺人事件-「悪霊」ふたたび-」を読了した。著者の内芦辺拓はいわゆる新本格派のミステリー作家で、ミステリーに対する造詣の深さ、博覧強記で知られるている。本書は江戸川乱歩が昭和八年から九年にかけて、雑誌「新青年」に三回掲載されたまま未完に終わった「悪霊」を、芦辺拓が補遺して完成させた作品である。なお、本書の中で、江戸川乱歩の執筆になる部分は字体を変えて表記されている。
 本書は、物語の語り手が、東京市麻生区箪笥町の古本屋で「新青年」の古雑誌を手にする場面から始まる。彼は訳があって「張ホテル」に向かう途中であった。
 「悪霊」第一回