『万葉集』を訓(よ)む(その二千百)

 今回は、一七三三番歌を訓む。本歌は、「碁師(ごし)の歌(うた)」の二首目。 
 写本に異同はなく、原文は次の通り。

  思乍 雖来々不勝而 
  水尾埼 真長乃浦乎 
  又顧津

 一句「思乍」は「思(おも)ひつつ」と訓む。「思」はハ行四段活用の他動詞「おもふ」の連用形「思(おも)ひ」。「おもふ」は「何か具体的な考えや感情を心にいだく」ことをいう。「乍」(一七三〇番歌他に既出)は、活用語の連用形に付いて動作の並行・継続を表わす接続助詞「つつ」に宛てた借訓字。
 二句「雖来々不勝而」は「来(く)れど来(き)かねて」と訓む。「雖来」(一七一一番歌に既出