「高橋克彦」の日記一覧

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元慶の乱の勝者

 高橋克彦の「水壁-アテルイを継ぐ男-」を読了した。著者は直木賞作家で、推理小説を始め伝奇小説、時代小説等を手広く手掛けている。本書は、元慶の乱をモチーフとし、蝦夷の英雄アテルイの子孫の若者の活躍を描いた歴史物語である。  物語は元慶元年(877年)秋に始まる。その頃、日本全国で飢饉が発生したため、東北地方の大和朝廷支配地である陸奥、出羽で苛政に喘いでいた朝廷に帰属した蝦夷の俘囚に山野に逃亡する…

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高橋克彦の「鬼九郎鬼草子  舫鬼九郎2」。

★3.3 シリーズ2作目。舞台は会津、加藤家。 108歳の天海和尚が滞在する会津を目指す鬼九郎一行。途中でそれを阻止せんと根来傀儡衆が襲ってくる。 蜘蛛舞の万波、幻戯の千波、猿使いの金波、犬使いの銀波、百面相の磯波などなど。そしてその陰に由比正雪の一党が暗躍する。 更には柳生十兵衛の一党も幕府の目付衆として動き出した。加藤嘉明亡きあと息子の明成施政下に起きた堀主水一族の会津騒動、どうやらそ…

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好敵手は坂上田村麻呂

 高橋克彦の「火怨-北の燿星アテルイ-(上、下)」を読了した。著者は直木賞作家で、推理小説を始め伝奇小説、時代小説等を手広く手掛けている。本書は、朝廷の陸奥支配に抗して戦った、蝦夷の英雄アテルイ( 阿弖流為)の活躍を描いた歴史物語である。本書では、蝦夷を支援する東北物部氏の跡継ぎ天鈴の言葉として、蝦夷は出雲の大国主命の子孫であり、元々出雲の斐伊川流域が本拠地であったが、大和朝廷との争いに敗れて東…

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高橋克彦の「舫鬼九郎(もやいおにくろう)1」。

★3.5 出版社を変えての焼き直し版シリーズ初作。 寛永20年(1643年)親父橋のたもとに女の首なし死体が。時代は島原の乱の5年後、乱の首謀者が残したとされる10万両、その噂に翻弄される者たちがいた。 彼らに敢然と立ち塞がるのは舫鬼九郎、極端に細身の刀を操る。あの幡随院長兵衛もいつの間にか手下にされている、背後には百歳超えの天海、仲間には絶世の太夫・高尾。 左甚五郎を頭とする根来貧群、柳…

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高橋克彦の「水壁(すいへき) アテルイを継ぐ男」。

★3.5 元慶2~3年(878~879年)に出羽(秋田地方)で俘囚(蝦夷)が蜂起し、秋田城を攻略占拠した乱(元慶の乱)を描いたもの。 記録では乱の首謀者は不明であるが、俘囚側の勝ち方が鮮やかで、この物語では阿弖流為の4代孫の天日子(そらひこ)と京から招いた軍師・幻水を軸に統率者として設定している。 陰で彼らを支援するのはかつての豪族・物部氏の東北を拠点とする一派。 乱のきっかけは干ばつによ…

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イザナギとイザナミ

高橋克彦の「石の記憶」を読了した。著者は直木賞作家で、推理小説を始め伝奇小説、時代小説等を手広く手掛けている。本書は、十和田湖の近くに埋もれていた巨大ストーンサークルの秘密に挑んだ表題作の短篇に、8篇のホラー掌篇をプラスした短編集である。  「石の記憶」:語り手の「私」は、大昔土地の記憶を覚知し、しかもそのイメージを他人に見せることの出来る能力を持つ火明継比古とともに、秋田県鹿角市にあるストーン…

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イザベラ・バードの「完訳日本奥地紀行2」。

完訳 日本奥地紀行2  本書は、明治11年(1878年)5月〜12月間に、日本各地を旅行した英国女性旅行家のイザベラ・バードが著わした、「日本奥地紀行」の新潟〜青森編。 例によって蚤と蚊に悩まされながら、東北の旅は続く。なにせ西洋人など一度も見たことの無い地方であるがゆえに、大きな町では何百人も見物に集まるし、宿ではきまって障子の穴から覗かれる。 今回はちょっと悲惨、雀蜂にさされ発熱して寝込…

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イザベラ・バードの「完訳日本奥地紀行1」。

高橋克彦の「ジャーニー・ボーイ」がきっかけでこの紀行文を読むことに。 完訳 日本奥地紀行1  本書は、明治11年(1878年)5月〜12月間に、日本各地を旅行した英国女性旅行家のイザベラ・バードが著わした、「日本奥地紀行」の横浜〜新潟編。 民族学者かと思えるほどに日本や日本人について調べた結果を緻密に記録しており、当時の日本や日本人を知るうえで、非常に貴重な資料といってもいい。 特に幕末か…

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高橋克彦の「ジャーニー・ボーイ」。

★4.0 明治11年(1878年)日本各地を旅行し、「日本奥地紀行」を出版した英国女性旅行家のイザベラ・バード。旅行の一部(東京〜日光〜新潟)を物語としたもので、日本人通訳・伊藤鶴吉の目を通して語られていく。単調になりやすい旅行記に、謎の襲撃者集団を登場させて、物語に緊張感を与え、旅行ルートの選択肢を広げるなどの効果ももたらしている。それにしても、バード女史の好奇心豊かな観察眼にはぐっと引き込ま…

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日本奥地紀行の旅

高橋克彦の「ジャーニー・ボーイ」を読了した。著者は直木賞作家で、ミステリー出身であるが、伝奇小説、時代小説、ホラー小説、浮世絵評論とレパートリーが広く、最近は時代小説を手掛けることが多い。本書は、1878年(明治11年)来日したイギリス人の女性旅行家・紀行作家のイザベラ・バードの「日本奥地紀行」の旅をモチーフとしたフィクションである。  本書の主人公はイザベラの通訳として北海道まで同行する伊藤鶴…

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歌麿の娘

高橋克彦の「かげゑ歌麿」を読了した。著者は直木賞作家で、推理小説を始め伝奇小説、時代小説等を手広く扱っている。本書は、「だましゑ」シリーズの第6作であり、全3編の連作中編集である。本書の主人公は喜多川歌麿であるが、脇役の春朗(後の葛飾北斎)、蘭陽始め、お馴染の仙波一家が総登場である。  さやゑ歌麿:本所吾妻橋の近くで、深夜、近所で起こった呉服屋の外回り定吉の殺人事件を捜査中の北町奉行所の定廻り同…

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八甲田山の地下に眠るもの

高橋克彦の「ツリー(上、下)」を読了した。著者は直木賞作家で、推理小説でデビューしたが、伝奇小説、時代小説、ホラー小説、浮世絵評論とレパートリーが広く、私の好きな作家の一人である。最近は、「だましゑ」シリーズや「完四郎広目手控」シリーズ等、時代小説を手掛けることが多いが、本書は、著者久々の伝奇小説である。  書評家の私は、友人で編集者の田中から、田中の会社の小説の新人賞に応募してきた風森大樹とい…

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神風連の最期

高橋克彦の「完四郎広目手控 不惑剣」を読了した。本書は、旗本の次男で剣の達人であったが武士を捨て、広目屋(瓦版屋、新聞屋、広告宣伝業)になった香冶完四郎を主人公とした時代小説シリーズの第五作で、11篇からなる連作短編集である。  物語の舞台は、西南戦争前夜の不穏な時代である。舟遊びをしていた完四郎は、正体不明の暴漢達に襲われる。相手はどうも警視庁巡査らしく、警視庁の剣術師範の声が掛っていた完四郎…