けさ秋や母の声音の風切つて 清水基吉 寒蕭々 けさ秋や母へかたむく百日紅 細川加賀 『傷痕』 けさ秋や瘧の落ちたやうに空 一茶 ■文政二年己卯(五十七歳) けさ秋や芙蓉正しき花一つ 野村喜舟 小石川 けさ秋や金亀子(こがねむし)死を真似しまゝ 殿村莵絲子 花寂び 以後 これこそと何も見初めず今朝の秋 千代尼 ごぼ~と薬飲みけり今朝の秋 尾崎紅葉 さ…
かき氷幸せさうな愚痴を聞く 平林孝子 きくとなく愚痴の聞き役古茶をのむ 中溝 八重子 ぐち~と愚痴をこぼしておでん煮え 清崎敏郎 ぐつぐつとおでんぐつぐつぐつと愚痴 蛯子雷児 げじげじが背後を渡る所詮愚痴 岸田稚魚 雁渡し またしても愚痴をいふなり汗拭ひ 久保田万太郎 陰口も愚痴も流して心太 大森玲子(築港) 夏めくや縫針もてば愚痴しらず 谷本てる…
一本は彼女の為の新酒かな 稲畑廣太郎 一滴もあまさぬ新酒貧清し 栗生純夫 科野路 三輪山の月をあげたる新酒かな 石嶌岳 世のうさや新酒飲み習ふきのふけふ 新酒 正岡子規 九八屋へそろそろ新酒届く頃 河合寿子 九十九の鼻かけ猿に新酒かな 立花北枝 二三人くらがりに飲む新酒かな 村上鬼城 二三匹馬繋ぎたる新酒かな 新酒 正岡子規 二三子の携へ来る新…
庭に下りてホ句書いて来ぬ秋の暮 長谷川かな女 雨 月 天を衝く俳諧弔花閒石に 高澤良一 さざなみやつこ 杜若われに発句の思ひあり 松尾芭蕉 土手にひねもす発句大のバルカンせんさう 加藤郁乎 冬の夜や我俳諧のありどころ 小杉余子 余子句選 冬鵙を前や俳句は気合いもの 高澤良一 随笑 唐辛子ぽつりと巴里に発句なす 小池文子 唐土の俳諧問はん飛ぶ胡蝶 松尾…
とんぼうの藁のいろして風の盆 福島由子 とんぼうや水輪の中に置く水輪 軽部烏頭子 すツぱだかへとんぼとまらうとするか 種田山頭火 草木塔 その上にその上に飛び夕蜻蛉 深見けん二 とんぼうの空音もなく深かりし 藤松遊子 とんぼうの群を横切る蜻蛉かな 大石雄鬼 たはやすくとられてかなし糸とんぼ 福田蓼汀 秋風挽歌 ついて来るやうにも思ふとんぼかな 細見綾…