斗酒なお辞さない師弟
梶よう子の「墨の香」を読了した。著者は時代小説を主なテリトリーとする作家である。本書は、理由もなく嫁ぎ先から離縁され、実家に戻って筆法指南所(書道教室)を始めた女流書家を主人公とした時代小説の連作短編集である。 岡島雪江は旗本の娘であり、旗本の森高章一郎に嫁いでいたが、ある日理由も告げずに離縁される。彼女は幕末の伝説的な書家巻菱湖の弟子であり、実家に戻った後、若い娘達を相手に筆法指南所を開く…
梶よう子の「墨の香」を読了した。著者は時代小説を主なテリトリーとする作家である。本書は、理由もなく嫁ぎ先から離縁され、実家に戻って筆法指南所(書道教室)を始めた女流書家を主人公とした時代小説の連作短編集である。 岡島雪江は旗本の娘であり、旗本の森高章一郎に嫁いでいたが、ある日理由も告げずに離縁される。彼女は幕末の伝説的な書家巻菱湖の弟子であり、実家に戻った後、若い娘達を相手に筆法指南所を開く…
梶よう子の「北斎まんだら」を読了した。著者は時代小説を主なテリトリーとする作家である。本書は、晩年の葛飾北斎とその娘のお栄の暮らしを、弟子の三九郎(高井鴻山)の目を通して描いた時代小説である。 信州小布施の豪商の惣領息子で十五歳の高井三九郎は、絵師葛飾北斎に弟子入りしようと考えて江戸に出て来る。三九郎は背丈が六尺を超える長身であるが、目元の涼しい男前の若者であり、かつて京で絵を学んでいた。初…
梶よう子の「葵の月」を読了した。著者は時代小説を主なテリトリーとする作家である。本書は、徳川10代将軍家治の継嗣であった徳川家基の急死をモチーフとしたサスペンス風時代劇である。 西丸書院番組頭立原惣太夫の跡取り娘志津乃の幼馴染で許婚者だった坂木蒼馬は、西丸書院番として仕えていた家基が毒死したことに責任を感じて出奔し、勘当されていた。父の惣太夫と継母の時世は、蒼馬の親友でやはり西丸書院番の高階…
梶よう子の「ヨイ豊」を読了した。著者は時代小説を主なテリトリーとする作家である。本書は、明治維新の激流の中で、浮世絵の絵師の名門である歌川派を率いて苦闘した四代目歌川豊国の半生を描いたものである。 元治元年12月(1865年1月)、歌川派の大名跡の三代歌川豊国(初代国貞)が亡くなる。江戸の版元達の間では、その弟子で娘婿の清太郎(二代国貞)が四代豊国を襲名するか否かに注目が集まっている。黒船来航…