甘い飴の効能

 梶よう子の「葵の月」を読了した。著者は時代小説を主なテリトリーとする作家である。本書は、徳川10代将軍家治の継嗣であった徳川家基の急死をモチーフとしたサスペンス風時代劇である。
 西丸書院番組頭立原惣太夫の跡取り娘志津乃の幼馴染で許婚者だった坂木蒼馬は、西丸書院番として仕えていた家基が毒死したことに責任を感じて出奔し、勘当されていた。父の惣太夫と継母の時世は、蒼馬の親友でやはり西丸書院番の高階信吾郎を娘婿の候補として考えているが、志津乃は蒼馬を思い切ることが出来ない。そんな志津乃に信吾郎は、生死に関わらず、蒼馬の行方が判っても自分に教えない様にと、謎め