「藤井邦夫」の日記一覧

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藤井邦夫の「花見酒 秋山久蔵御用控29」。

★3.3 シリーズ29作目。きっちり4話*3冊ペース。 物語の方はマンネリ化している、今回は久蔵の啖呵もなかったし。 こうなると秋山家の変化を追うしかなくなる。大助は剣の素振りを始めたし、いよいよ次巻とでは弟か妹の誕生となる。 秋山家は奉公人の与平、お福夫婦をはじめみな娘を期待しているようだが、さあてどうなる。 幕末(1862年頃)の八丁堀細見図に秋山久蔵屋敷があったのを思い出した。説明…

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藤井邦夫の「煤払い 秋山久蔵御用控28 」。

★3.3 シリーズ28作目。例によって月1件の事件(年3冊*4編=12編)が歳時記どおりに語られる。 息子の大助が生まれて4年、年が明ければ6歳(数え)となる。「うちのじじちゃんに何をする」と与平をかばう大助(この名は野村胡堂の池田大助から取ったと思われるのだが)。木刀でならず者に立ち向かっていく・・「煤払い」より。 香織は2人目を身籠っており、来年夏(8月版)には生まれてそう。バランス上で…

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藤井邦夫の「夕涼み 秋山久蔵御用控27 」。

★3.3 シリーズ27作目。 年3冊となって4年目。1話が1月分できっちり歳時記通りに進んでいる。 「捕物出役」では皆久しぶりの捕物(検使与力の久蔵は火事羽織に野袴、陣笠と鉄鞭で、出役同心は鎖帷子、鎖鉢巻、籠手、臑当、刃引き刀と長十手)である。 『江戸町奉行事蹟問答』によれば、捕物出役に際しての与力の装束は「火事羽織、野袴、陣笠姿で右手に指揮十手を持つ」とあるが・・・。 与力の普段の出勤…

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藤井邦夫の「冬の椿 秋山久蔵御用控26 」。

★3.2 シリーズ26作目。例によって4つの連作短編。 今回はこれという特徴のない平凡な物語。しいてあげれば、秋山家の若き奉公人・太市が肥後細川家の元藩主・春斎を市井で助けたことぐらいか。 最後の「落し前」だけは、剃刀久蔵を感じさせる手荒い取り調べ、旗本屋敷に乗り込み、主に息子の成敗を迫る場面、などもあって何とかこのシリーズを維持している感じ。 早く太市が活躍する場面や、お糸が「笹舟」を仕…

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藤井邦夫の「夕映え 知らぬが半兵衛手控帖17」。

★3.3 シリーズ17作目。例によって4つの連作短編。 すべてが文庫の書下ろしだけに、各編のボリュームが大きく違うところが面白い。 表題作の「夕映え」では年老いた母親が惚けてしまい、息子がやむなく捨てに行く話。 息子の女房の訴えで、半兵衛は息子を親殺しにさせてはならじと探し回るのだが・・・。 手先の半次と鶴次郎はもちろん、柳橋の弥平次一家も総出演、なにせ人手が足りない。下っびきの幸吉、し…

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藤井邦夫の「渡り鳥 知らぬが半兵衛手控帖16」。

★3.3 シリーズ16作目。例によって4つの連作短編。 上司にも当たる吟味方与力の大久保忠左衛門からの仕事は1件のみ。他の3件は市中巡回中に出会ったことでの事件。 こののんびり感がいいのだろう。実際のところは未解決事件が山のように溢れているのが実情であろうが。どこやらの警察で未解決事件が数千件も放置されていたという報道があったばかりで、そっちの方が本物くさい。 毎回、切絵図で足取りを忠実に…

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藤井邦夫の「始末屋 秋山久蔵御用控25」。

★3.3 シリーズ25作目。例によって4つの連作短編捕物帳。 今回は久蔵のかっこいい啖呵も、太市の活躍もなかった。特筆すべきは香織の幼いころの話が出てきたこと。 香織が父親と笠井藩江戸屋敷に住んでいたころ、お針の稽古に通っていたときの友・おゆみが登場。 藩の後継ぎ騒動で己の子を秋山屋敷の前に捨て置いた。香織が保護してくれることを期待してのことだったが・・・。 その子を可愛がる大助もずいぶん…

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藤井邦夫の「守り神 秋山久蔵御用控24」。

★3.3 シリーズ24作目。例によって4つの連作短編。 今回は香織や大助、若い太市といった家族がらみの物語とはならなかった。唯一「腐れ縁」では狂言をはたらく女を船宿・笹舟の養女・お糸が尾行する場面があった。おっ、お糸の立ち回りと期待したのだが、残念。 お糸は子供のころから雲海坊と同じ長屋に暮らしていたのだが、実父がある事件で殺され、天涯孤独となった。お糸を笹舟に伴ったのはこの雲海坊である。年…

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藤井邦夫の「生き恥  秋山久蔵御用控23」。

★3.2 シリーズ23作目。 例によって4つの連作短編。「達磨凧」では盗賊・霞の長五郎、「生き恥」では辻斬りを働く武家、「上意討」では4千石の旗本当主、「巻添え」では大目付と2万石の大名家をそれぞれ追い詰めていく物語。 今回は武家相手の話が多いだけに久蔵の啖呵を聞くことになるが、なんだか迫力に欠ける。 このシリーズも長いだけに、新たな工夫も必要な時期。新人の太市も登場したが、まだまだ活躍と…

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藤井邦夫「知らぬが半兵衛手控帖15 五月雨」。

★3.2 シリーズ15作目。例によって4つの連作短編。 「腐れ縁」では、岡っ引き・半次の幼馴染のおかよと文七を扱っている。おかよは半次が初めて惚れた相手、そのおかよを両国広小路で認め、調べてみると、おかよには今も文七が付きまとっていた。 文七が御家人の息子を殺めたことから追われる身に。おかよを頼ろうとする文七、おかよに類が及ばないよう奔走する半次。最後は覚悟を決め文七を殺め己の命も絶つおかよ…

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藤井邦夫の「島帰り 秋山久蔵御用控22」。

★3.5  リーズ22作目。例によって四つの連作短編。秋山屋敷は八丁堀岡崎町にある。久蔵の一子・大助は、父親の出仕を見送った後、与平を供に町内を見回り散歩することを日課にしている。与平を「じいじ」と呼びなついている。今回は太市の活躍する場面はない。 珍しく久蔵の啖呵が聞ける、旗本屋敷に乗り込んだ久蔵は、「ふん、二千石と二百石、差し違えるのも面白れえ・・・」「何だったら、直参同士として立合い、叩…

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藤井邦夫の「詫び状 知らぬが半兵衛手控帖14」。

★3.3  シリーズ14作目。久しぶりのこのシリーズ、ずいぶんと久蔵シリーズの方には遅れをとってしまった。 いつものように連作4編。自分の縄張り内での事件と、上司の与力・大久保忠左衛門からの密命事件とが半々。 「花吹雪」では、珍しく鎌倉河岸のお夕が絡んだ事件。お夕は昔、半兵衛が手札を与えていた岡っ引き・辰造の娘で、辰造が病で死んだとき、半兵衛は娘のお夕に纏まった金を渡した。お夕はその金で小さ…

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藤井邦夫の「秋日和 知らぬが半兵衛手控帖13」。

★3.5 シリーズ13作目。4つの連作短編で、表題作の「秋日和」は、これこそ《知らぬが》半兵衛の代表作かといえる物語。大工の兄弟弟子だった二人は仲が良く、自分たちの子供の清助とおしずを将来夫婦にしようと約束する。父親の死で女郎となったおしずも、労咳にかかり朋輩のおみつに看取られた。看病してもらったおみつに礼のつもりで夫婦になるはずだった話をする。おみつはおしずに入れ替わり、清助に嫁いでいた。半兵…

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藤井邦夫の「無法者 秋山久蔵御用控21」。

★3.3  シリーズ21作目。いつものように4つの連作短編。秋山家の若き奉公人・太市も登場頻度が増してきた、だが洞察力となると、まだまだ久蔵には遠く及ばない。今回、珍しく柳橋の船宿・笹舟の養女となっているお糸の立ち回りがあった。お糸が破戒僧・浄空の手首を掴んで捻り、その足を払った(表紙の絵はおそらくその場面であろうが)。今回、「無法者」と「抜け道」に登場した清次という男、久蔵が最後に、「気が向い…

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藤井邦夫の「迷い猫 知らぬが半兵衛手控帖12」。

★3.3 シリーズ12作目。4話の連作短編。表題作の「迷い猫」では、半兵衛に飾り結びの朱房を作ってくれたおなつが、毒殺事件にからんでいたことが判明。大番屋に引き立てられる前のわずかな時間、おなつは毒を呷り絶命した。そうさせたのも「知らん顔の・・・」という。「三行半」では鶴次郎の義姉・おすみが登場する。亡くなった実兄・亀太郎の嫁で、息子の文吉を瀬戸物屋・双葉屋に養子に出し、自分は再嫁していたのだが…