「藤井邦夫」の日記一覧

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藤井邦夫 の 偽久蔵 新・秋山久蔵御用控(八)

★3.3 新シリーズ8作目。 「恨み節」では20余年前の事件を逆恨みした女が久蔵や弥平次を襲おうかという話。秋山家は勿論、向島で隠居中の弥平次・おまき夫婦、更には柳橋の船宿・笹舟にも緊張が。こうなると動員力が特徴の柳橋一家も珍しく人手不足となり、蕎麦屋・藪十の長八と清吉も応援に。 新シリーズになって久蔵の作戦本部は笹舟ではなくなったようだ。秋山家の場合と今回のように南町の用部屋のことも多い。気…

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藤井邦夫 の 再縁話-新・知らぬが半兵衛手控帖 (10)

★3.3 シリーズ10作目。 「再縁話」では珍しく半兵衛に縁談。相手の住むのは根岸、〈飾り結び〉という珍しい内職仕事も紹介される。 「化け猫」では黒猫を斬ったことで幻影を見てしまう侍が登場。牛込御門から神楽坂を上り毘沙門天で有名な善国寺近くの武家地。更には通寺町の先の牛込矢来下が登場するが、このあたりも捕物帳では珍しい。 「岡っ引」では同僚の〈見廻り日誌〉なるものが登場するが、これは創作なの…

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藤井邦夫 の 小糠雨 新・秋山久蔵御用控(七)

★3.3 新シリーズ7作目。 「賞金首」では珍しく両国稲荷が現場として使われる。繁華な場所だけになかなか小説には登場しないようだ。長八の「藪十」は柳橋のたもとの町屋の外れとあり、船宿「笹舟」は2階から大川に行き交う船が眺められるとあるから柳橋を渡ったすぐの東側か。 「追う娘」では大助と幼馴染で同心の娘・佳奈が登場。場所は柳森稲荷と玉池稲荷で小説ではよく使われる。同じ寺子屋で<悪餓鬼の大助>と呼…

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藤井邦夫 の 招き猫- 新・知らぬが半兵衛手控帖(9)

★3.3 新シリーズ9作目。いつも感心するのは切絵図を忠実に描写していること。 「三下仲間」は神田明神下の裏通りの明神一家を抜けようとする若者。「出戻り」は大久保忠左衛門が仲人をした本郷御弓町の旗本から離縁された形の奥方。「招き猫」は鳥越明神の茶店の元の住人が盗賊の頭、茶店には巨大な招き猫が。「虎落笛」は不忍池近くの上野元黒門町で男に追われる粋な形の年増を助ける話。 神田八ツ小路は昌平橋、淡…

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藤井邦夫 の 新参者 新・秋山久蔵御用控(五)

★3.3 新シリーズ5作目。 「粋な女」では久蔵の倅・大助が女探しの手伝いを、だが久蔵はそれ以上の探索は拒否する。また、今回は定町廻り同心・神崎和馬の妻・百合江がちらほら登場する。 「新参者」では久しぶりに旗本屋敷に乗り込み、「2百石取りの町奉行所与力と刺し違えようってのか」の啖呵も。だが、久蔵が刺客となった北島隼人を許したのは意外。 今回は珍しく筑後柳川藩11万石の上屋敷が登場。あの立花宗…

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藤井邦夫 の 返討ち 新・秋山久蔵御用控4

★3.0 新シリーズ4作目。 「裏の顔」では久蔵は大助に浪人2人の尾行を命じた。既に17歳のはずだが、元服前であり当然奉行所の見習いにも出ていない。同心の家とは異なるのかな。 「親父橋」では強盗を働いた盗っ人らしき男を捕えた。だが、この男のアリバイ崩しではなく証明の方に走り、素人女の夜鷹を探すのは流れからいって不自然と思われる。幸吉の男気を見せたかっただけなのかな。 「俄狂言」では商家の道楽…

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藤井邦夫 の 戯け者-新・知らぬが半兵衛手控帖(8)

★3.3 新シリーズ8作目。きっちり4編、3作/年が守られている。1月1話の割り振り。 「長い一日」では、日切りという新しい趣向。人質を取って自身番に立てこもった男を夕暮れまでに始末しろとの奉行の命令である。この物語では頼りない定町廻り同心の風間鉄之助や、隣に住む神代新吾が養生所見回りから定町廻り同心になって手助けする。立て籠り男は半兵衛に誘拐された娘を助け出せと要求した。 「戯け者」ではま…

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藤井邦夫 の 隠居の初恋-新・知らぬが半兵衛手控帖(7)

★3.3 新シリーズ7作目。年3作*4編で、出版月が物語の季節の推移に合ってきた。 今回の特徴は《前振り効果》が2編。「冬の幽霊」では番頭による主の暗殺事件が盗賊宿の摘発へ繋がる話。「隠居の初恋」では隠居と若い女の話が仇討譚へと繋がる。 ・《前振り》は読者の予想とは違う方向へ話を持っていき、興味をより引き立てる小説手法のこと。 面白いのは定町廻り同心の風間鉄之助に手柄を譲る2編が含まれている…

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藤井邦夫 の 裏切り 新・秋山久蔵御用控3

★3.3 新シリーズ3作目。 過去のデータと時間経過から、大助も17歳のはず。「臆病風」では昌平坂学問所に通う大助と友の原田小五郎は前髪立てとある。そろそろ元服のころか。見習で出仕もしなければならない。 小春も大人びた口調になっており12歳の頃か。「面汚し」では神崎和馬は久蔵の息のかかった同心で部下ではない扱い。ま、そもそも吟味方与力が市中に出歩くほど暇な業務ではないはず。 時は新シリーズに…

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藤井邦夫 の 狐の嫁入り-新・知らぬが半兵衛手控帖(6)

★3.3  新シリーズ6作目。例によって4つの連作短編。 「狐の嫁入り」では溜池に狐火が現れた。昔から転々と点滅する火を狐火と呼び、その列を嫁入り行列に例えた。珍しく赤坂田町の薬種問屋が舞台、捕り物帳には滅多に登場しない地域だが溜池という特殊な場所が必要だったのか。薬種問屋の倅が嫁を伴って帰ってきたが嫁の様子がしっくりこないという話。 「半人前」では弥平次の手下の由松が「角手」という捕り物道…

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藤井邦夫 の 騙り屋 新・秋山久蔵御用控2

★3.3 新シリーズ2作目。出版時の季節感に内容を合わせたやり方(4話*3冊)もずれてきたか。年に3作は無理になったのかな。 11歳の小春も台所を手伝っている。学問所に通う大助のけたたましさも。 毎回思うところは、各話の落としどころ、作者が一番苦労するところなのだろうな。「不義密通」では珠代は最後は生き恥を晒して尼になる。うーん・・。 真山源吾という20歳の臨時廻り同心が登場。臨時廻りは年…

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藤井邦夫 の 片えくぼ 新・知らぬが半兵衛手控帖(5)

★3.3 新シリーズ5作目。 粋なタイトルではあるが、音次郎の幼馴染のおしんのこと。おしんと所帯を持つ相手を救ってやる切ない話だった。 3話まで弥平次一家が登場しない。方針が変わったかといらぬ心配。だが、最後の相手は上方の盗賊集団・閻魔の大五郎一家、幸吉や雲海坊、勇次などが。弥平次とおまきもちらっと。 当分は久蔵一家の話には立ち入らないのかな。人数の必要な時のみ弥平次を頼るバターンか。 …

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藤井邦夫 の 恋女房 新・秋山久蔵御用控1

★3.3 第2部初作。予告通りの10年後。 大助は元服前、70越えの与平はお福の位牌の前で、久蔵の白髪が目立つだの香織が肥っただのと呟いている。 弥平次とおまきの夫婦は向島に隠居し、お糸は幸吉を婿に迎えて平次という息子を得ている(平次や大助と名付けるところはこの作者らしい)。 幸吉親分の手配りは弥平次譲り、手下に若い者が加わっている。蕎麦職人見習の清吉と風車売りの新八。 今回は世代の移り…

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藤井邦夫 の 名無し 新・知らぬが半兵衛手控帖(4)

★3.3 新シリーズ4作目。 相変わらず半兵衛さんは女に甘い。「嘘吐き」では、遊び人殺しの下手人として、関係のない己の惚れた男の人相を言って探させる。だがその若い娘はお咎めなしに。 ところで久蔵シリーズが再開し、あちらは10年後の設定とか、久蔵の嫡男・大助は元服前だが、岡っ引の弥平次は隠居して幸吉が跡を継いでいるらしい。 前作の「緋牡丹」で登場したおふみは今回の「名無し」で元気な姿を見せた…

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藤井邦夫 の 緋牡丹 新・知らぬが半兵衛手控帖3

★3.3 新シリーズ3作目。4つの連作。 「緋牡丹」では鶴次郎の緋牡丹の半纏を携えた娘が半兵衛を訪ねてきた。13歳の娘・おふみはかつて鶴次郎から困ったときに頼れと言われたという。 今年、戸塚から浅草の料理屋に奉公に出たが人殺しの相談を聞いてしまったらしい。事件に絡み秋山家に匿ってもらった縁で気に入られ、そのまま奉公しそうである。 秋山久蔵も重要な役どころで登場した。そうかあちらのシリーズが…

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藤井邦夫の「野良犬 秋山久蔵御用控30」。

★3.3 シリーズも大台の30作目。 「野良犬」では久蔵がお糸の婿の心配を。「弥平次が良いって云いませんよ」はおまき。大きな事件でもないとすんなりいかないだろうな。 「紫陽花」では雨宿りした久蔵に青い蛇の目傘を貸した美保という女がいた。久蔵を早く追い払うための設定だが微妙。最後は知らぬが半兵衛を決め込む。結末が似てきたな。 「結び文」では普段女っけのない和馬の屋敷に投げ文があった。子供の頃…

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藤井邦夫の「思案橋-新・知らぬが半兵衛手控帖(2)」。

★3.3 新シリーズ2作目。 この作者は切絵図を忠実に再現するのが特徴で、読者にとっては非常に理解しやすい。 「思案橋」では、おつやが「江戸橋」「荒布橋」を渡って小網町の「思案橋」に至る。ここでのおつやの迷いが物語に味を添えるのであるが(表紙)。また今回は「一石橋」の袂の蕎麦屋が何度も登場した。 「忠義者」では秋田犬のしろが探索の重要な役どころ、これだけ文庫ばやりの時代だが、犬を使う捕り物…

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藤井邦夫の「曼珠沙華-新・知らぬが半兵衛手控帖1」。

★3.3 新シリーズの初巻。物語は鎌倉河岸のお夕の店からの再開した。 前作で半兵衛は十手返上、北町奉行所を辞めたと思っていたが、あれあれ例繰方同心として登場。 ということは物書き同心として4年間謹慎していたということなのかな。 鶴次郎の代わりに音次郎という若者を採用した。派手な半纏が特徴。 目黒不動の近くで生まれ、両親を音次郎が子供の時に流行り病で亡くしている。 半兵衛の世話で南八丁堀…

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藤井邦夫の「夢芝居-知らぬが半兵衛手控帖(20) 」。

★3.3 シリーズ20作目で最終巻、次からは新シリーズ。 噂で最後に鶴次郎の死で終わるのだと判ってはいても物悲しい。 「迷い猫」で珍しくも登場した鶴次郎と義姉のおすみの仲、今となってはわからない。半次はもしかしたら鶴次郎はおすみに惚れているではと言っていたのだが・・・。 それほどにこのシリーズには縁者が登場しないのだ。彼らのモチベーションはいったい何によって保たれているのやら気になるところ…

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藤井邦夫の「主殺し-知らぬが半兵衛手控帖(18) 」。

★3.3 シリーズ18作目。新シリーズが出たらしい、残りを読んでしまわねば。例によって連作4編。 「落し物」では葵の紋の印籠が登場する。大名紋章図を見ると意外と多い、目についただけでも20以上の藩が使っている。ちなみに地元豊後、松平家の2藩(府内、杵築)は葵紋ではない。 この作者ほど忠実に江戸切絵図を使う物語の例をほかには知らない。ネットで簡単に切絵図を開くことができる時代、世の中変わったね…