「砂原浩太朗」の日記一覧

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砂原浩太朗の「霜月記(そうげつき)」

神山藩もの3作目。父の隠居、失踪で町奉行を継がねばならないことになった総次郎。父を探し出すことが優先されるが、起きた事件はその父が関係するのかと思われる。現場にあったのが父の物と思われる藤の模様の根付。逃げた武士に殺されたのは豪商の信濃屋の三番番頭を首になった彦五郎だった。落ち込んでいる総次郎の力となるのが幼馴染の武四郎と妹の奈美。祖父の左太夫も力を貸そうという気になる。 馬廻り組、日…

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砂原浩太朗 の 藩邸差配役日日控(にちにちひかえ)

★3.5 神宮寺藩7万石の江戸上屋敷でおきるドタバタを、差配役の頭、里村五郎兵衛を通して描く。若君の消失事件や藩邸の奉公人の痴話裁定、はたまた奥方の愛猫疾走事件などが起きる。差配役とはなんでも屋なのである。 また、里村家の内情も描写される。夫が責任をとって自裁し離縁となった長女の七緒、小太刀の稽古に熱を上げる澪、よく顔を出す亡き妻の妹、咲乃など。十数名いる差配方の下役の描写も面白い。心配…

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初めて恋した人

 砂原浩太朗の「黛家の兄弟」を読了した。著者はフリーライター、編集者出身の時代小説作家で、2016年、「いのちがけ」で第2回決戦!小説大賞を受賞し、作家デビューしている。本書は、架空の神山藩を舞台とした「神山藩」シリーズの第二作であり、神山藩で代々筆頭家老の黛家に生まれた、三人の兄弟の生き方を描いた時代小説である。なお、本書は2022年に、第35回山本周五郎賞を受賞している。  本シリーズの舞…

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墨だけで描いた絵

 砂原浩太朗の「高瀬庄左衛門御留書」を読了した。著者はフリーライター、編集者出身の時代小説作家で、2016年、「いのちがけ」で第2回決戦!小説大賞を受賞し、作家デビューしている。本書は架空の神山藩で郡方を務める高瀬庄左衛門を主人公とした時代小説であり、2021年、第15回舟橋聖一文学賞、第11回本屋が選ぶ時代小説大賞受賞作である。なお、タイトルの御留書とは、後述する郡方が郷村を回って調べたことを…

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砂原浩太朗 の 黛家の兄弟

★3.4 神山藩もの2作目。 藩内の2大勢力である黛家と漆原家の権力闘争をミステリー調に描く。 筆頭家老である黛家の3男・新三郎には長兄の栄之丞、次兄の壮十郎がいる。新三郎は大目付の黒沢家へ婿として入り、目付の仕事に励むことになった。 壮十郎が無頼な者らと仲間を組み、敵対する組の頭と問題を起こした。はずみとはいえ、次席家老の漆原家の嫡男を斬り殺してしまった。そしてその評定では相手方に非があっ…

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砂原浩太朗 の 高瀬庄左衛門御留書

★3.5 話題となっていた作品がやっと図書館に入り読んでみた。直木賞候補作品。 高瀬庄左衛門は10万石の神山藩で郷村廻りを務めとする50過ぎの郡方である。23歳の息子・啓一郎は嫁・志穂を迎え同じ郡方へ出仕している。家禄と啓一郎の食禄を合わせても50石の下士で、禄の半ばは藩に借り上げられている。余吾平という60過ぎの老僕が1人。 御留書とは郷村廻りで記録する収穫高や現地で見聞したことを記録、提…