暗黒の連鎖
岩井圭也の「暗い引力」を読了した。著者は小説家で、2018年「永遠についての証明」で第9回野性時代フロンティア文学賞を受賞して作家デビューしている。本書は、幸せを求めながらも不幸の連鎖に引きずり込まれた人々を描いた、ブラックなミステリーの短編集である。 「海の子」:七十二歳の私は、最近妻の桂子に先立たれたばかりである。私には海太という二十歳の息子がいるが、実は息子は養子であり、私はそのことを…
岩井圭也の「暗い引力」を読了した。著者は小説家で、2018年「永遠についての証明」で第9回野性時代フロンティア文学賞を受賞して作家デビューしている。本書は、幸せを求めながらも不幸の連鎖に引きずり込まれた人々を描いた、ブラックなミステリーの短編集である。 「海の子」:七十二歳の私は、最近妻の桂子に先立たれたばかりである。私には海太という二十歳の息子がいるが、実は息子は養子であり、私はそのことを…
岩井圭也の「楽園の犬」を読了した。著者は小説家で、2018年「永遠についての証明」で第9回野性時代フロンティア文学賞を受賞して作家デビューしている。本書は、太平戦争開戦前夜に海軍のスパイとして、防諜活動のためにサイパン島に派遣された、インテリ青年の姿を描いたミステリーである。 物語の舞台は太平洋戦争勃発の直前である。本書の主人公の麻田健吾は甲府出身で、一高から東大文学部を卒業した秀才であっ…