暗黒の連鎖

 岩井圭也の「暗い引力」を読了した。著者は小説家で、2018年「永遠についての証明」で第9回野性時代フロンティア文学賞を受賞して作家デビューしている。本書は、幸せを求めながらも不幸の連鎖に引きずり込まれた人々を描いた、ブラックなミステリーの短編集である。
 「海の子」:七十二歳の私は、最近妻の桂子に先立たれたばかりである。私には海太という二十歳の息子がいるが、実は息子は養子であり、私はそのことをそれまで息子に話していない。妻の葬儀が終わったある日、息子が私に、自分は養子だろうと言い、養子になった経緯を聞かせろと迫る。止む無く私は、彼と妻が二十年前にとある