さんが書いた連載読書の日記一覧

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ジャストタイミングで「複眼人」を読んだ

羽化したての蝶が羽を震わせると、そのブルブルが観ているこちらまで伝わって魂が共鳴されてしまう。台湾の作家、呉明益の本を読むと、いつもそんな感じを受ける。蝶が好きで、台湾という環境を地球視点で観察する作家で、今回は廃棄物問題がテーマ。 実家じまいで片付けた不用品を業者に引き取りに来てもらったら、半世紀分の服でバンが満杯になってしまい、再訪してもらうことになった。ユニクロがない時代のよそ行きの山は…

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中世のなりすまし詐欺が面白過ぎる

令和6年の空手稽古始。今年の目標はキレと茶帯。下半身はアクセルで上半身はブレーキという教え、頭では理解しているがピタッと止まるには贅肉がじゃま、子供の身体がうらやましい。レパートリーは5つになったが、黒帯になるまでにあと8つ身体で覚えねばならぬ。がんばれ私。 さて「室町は今日もハードボイルド 日本中世のアナーキーな世界」清水克行著 読了。なんて面白い日本中世! 荘園制が崩れ行くとき、御百…

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愛にイナズマ

テアトル新宿に古い日本映画を観に行ったら映写機の不調で上映中止、ガーン。で、近くのピカデリーで「愛にイナズマ」を替わりに観てきましたが大当たり、今年一番の収穫でした。 コロナ期以来のモヤモヤ感、業界の適当に流してしまういい加減さ、詐欺グループの飲み会など、同時代社会を描いているけど家族の再生がテーマかな。みた後に元気が出て走り出したくなる映画。アベノマスクがこんな風に役立っているなんて。若…

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座禅会に行ってみたりして

猛暑でダレ切った自分ピシッとせんかい!と友人を誘って耕雲寺・夜の座禅会に行ってみた。歩いて30分汗だくで着いた寺院は寒いくらいの冷房で、緊張感で一気に汗が引きました。初心者は小部屋で練習してから道場へ入れます。 臨済宗は向き合って座るのに対し、曹洞宗は壁を向いて座る。また臨済宗は問いを与えられるのに対し、曹洞宗は無しなど違いはあるが、結跏趺坐して40分×2回、ひたすら座る。身・息・心の三文…

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プリニウス全巻で極上の娯楽旅

夏休み気分に乗っかって「プリニウス」1~12巻を大人買い。ヤマザキマリととり・みきとのコンビネーションが素晴らしく、AD1世紀のローマ世界を徘徊してきました。 インディ・ジョーンズで第二次ポエニ戦争のシラクサ包囲戦とアルキメデスを思い出し、コテンラジオでハンニバルを一気聴きしてからの流れで、歴史的に突出した奇人変人を追いかけるのは最高に面白い。 ネロの治世・ローマ大火・初期キリスト教…

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雨乞いの秘術を頼む

毎朝畑に出勤して4リットル入りじょうろ二つに水を満たして三往復の勤行。私何やってんだろと考えないことにした。 オーナーの指示で一斉にニンジンの播種をした時期が悪かった。あれから日照り続き、発芽した区画は10人に一人位だろうか。さらさらに乾いた畝に、弱弱しい芽が一列に並んでいるのを見たら、重い腰を上げて日参しなければなるまいて。 近隣の区画を観察していると、高い頻度でケアしている人の区…

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午後三時の読書でユキヒョウ野外調査

二階西向きの部屋は35.5度、半ば物置と化している地下室の温度は27度!迷わず地下室へ直行し、古いソファに寝転んで読書すれば背中がひんやり気持ち良い。 「幻のユキヒョウ」木下こづえ・さとみ ユキヒョウという生き物にに魅入られてしまった研究者と発信者の姉妹。絶滅危惧種のよく解っていない生態を探りに各国の研究チームと一緒に、標高4000mの生息地で奮闘した記録。 モンゴル1、インド2、…

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近場の秘境にリセットに行く

コロナ時期に三度予約を試みるも丁重にお断りをくらった古民家宿にようやく「里帰り」してきました。集落の人数を考えると絶対に感染者を出せないという鉄壁の守りは、さすが山梨。 棡原村までは車で一時間半、梅雨時期の靄と緑の中、上野原丹波山線を快適ドライブです。 一宮神社で杉の巨木を愛で、鶴峠を越えてしばらくで小菅の湯、あらら~金曜日は休館日って調べが甘かった。隣の道の駅、子育て中の燕が大忙しで舞…

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「怪物」を観て天丼を食う

是枝監督の「怪物」を観に新宿へ行く。 学校という特殊な社会にいる大人と、保護者という大人と、状況をうまく言語化して伝えることが難しい子供達と。いじめ、モンペアなどの学校問題っぽいと思って臨んだが、伝えたいものはそれではなかった。 おとなの思い込み、早とちり、保身にかき混ぜられて、小さな事件が台風に育っていく。台風の眼は二人の子供だけれど、そこは静かで素直な世界でstand by meを思…

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ノートルダム炎の大聖堂 緊迫の二時間

J.J.アノー監督がリアル映像を挿入しながら実話を映画化した。最初から最後まで気を抜けず、ようやく鎮火したところでどっと緩んだ。消防士はHEROだ。 巨大な歴史遺産建造物、しかも複雑なゴシック様式。 石造りと言っても天井部分は木造の梁でそこに至るまでに何百段の狭い螺旋階段を上らなければならない。水道管は継ぎ目の腐食が進んで一向に水圧が上がらないし、ホースの上に熱で溶けた鉛がポタポタ落ちて…

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「HHhH プラハ、1942年」ローラン・ビネ

HHhH:ヒムラーの頭脳はハイドリヒと呼ばれる の 略. ナチによるホロコースト首謀者にして責任者だったヒムラーの頭脳であった男、金髪の野獣と呼ばれた怪物ーラインハルト・ハイドリヒ。生きていたら間違いなくヒトラーを越えて狂った帝国を率いた男。彼は何万もの人々を効率的に虐殺する方法を編み出し、ナチ機構の神経を麻痺させていく。 チェコの亡命政府が、ナチ支配下に置かれた本国に送り込んだパラ…

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「RED NOTICE 国際指名手配」ビル・ブラウダー

こんなことを許されるはずがないということが現実に起きている国ロシア。 セルゲイ・マグニツキーという正義漢の弁護士は、法治国家を信じて不当逮捕され、地方の獄中で適切な治療もされず、拷問された末に37歳で獄中死した。 彼に弁護を依頼したブラウダー氏はアメリカ出身の投資ファンド、エルミタージュ社の創業者&CEO。ソ連解体時にロシアに投資をはじめ、ロシア最大の外国人投資家だったが、2005年に※…

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「レッド・ルーレット」 デスモンド・シャム

時間がかかったけど、読み終わってやっと現状中国に追いついた。怖いですね~凄い本でした。 大躍進の大失敗を観ていて絶対近づくまいと思っていたけど、中国バブルの凄まじさにBABA株を少しだけ試してみたことがある。鄧小平による政策転換で1980年代のからの中国は経済発展を遂げたが、成りあがって名を上げた超富豪のうち何人が財産没収、失脚、暗殺、拉致されずに残っているんだろう。 階級社会中国 …

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寒い時期に読んだ二冊

「ロスト・ケア」葉真中 顕 介護はビジネスと両立できるか。 人は他人の生を終わらせる権利を持てるのか。 本人のためのケア、介護者のためのケア、死刑とは誰の権利なのか。考えさせられる課題が続く。 興味深かったのは統計の使いかた。不審死の発生曜日、時刻分布、地域ごとの発生率から特異値を示した地域から事件を突き止める手法に感嘆した。 統計は使えますな。 「凍」沢木耕太郎 モデルは世界…

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6.4KM 銚子電鉄で犬吠へ行く

売れるもんは何でも売ると奮闘中の銚子電鉄に乗ってみようと、都内からチーバ君の耳先まで往復。東京駅から特急わかしおで銚子駅、歩いて港まで行って魚ランチ、醤油工場の後銚子電鉄に乗って犬吠埼温泉。翌日は灯台を観て銚子に戻り、特急で佐倉下車、川村美術館へ寄って帰宅という手軽な読書旅をしてきた。 平日ということもあるだろうけど、点を点を繋いで人を運ぶサービスについて考えさせられる旅でありました。 …

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ウクライナを身近に「台湾海峡一九四九」を読む

「台湾海峡一九四九」龍應台 この二週間、寝る前にこの厚い本を少しづつ読むのだけれど、毎日更新されるブチャやマリウポリの惨状とシンクロして辛かった。ひとたび戦争を起こせば、それは幾多の人生を抗いようもなく巻き込んで翻弄する。 この本はファミリーヒストリーの糸を集めて、織りあげたドキュメンタリー物語。舞台は中国・台湾・南洋諸島・ドイツ・ソ連、人はどこに生まれてどこで生きてどこで死ぬのか。故郷からも…

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「歩道橋の魔術師」を読む

2027年に予想される中国の台湾進攻。危惧するだけじゃなくて理解を深めようと探索していたら、呉明益に出会い、これは二作目。 「歩道橋の魔術師」 呉明益 戦後。共産中国から「転進」(避難)してきた国民党関係者を受け入れるため、台北に巨大な「中華商場」が作られた。忠、孝、仁、愛、信、義、和、平 と棟ごとに名前をつけた8棟を歩道橋でつなぎ、子供たちは店の上階で暮らし、階段を下りて共同トイレを使い、歩…

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呉明益「自転車泥棒」で時空ポタ

愛車を買い替えるのは簡単だけど、処分した自転車はどうなるんだろう?荷台に積まれた放置自転車は屑鉄になって道路標識やガードレールに生まれ変わるのか。カーボンフレームはカーボンリサイクルの輪に乗らないのか。 「きょうもパンクしないでね」と話しかけてフレームを軽くたたいて漕ぎ出すとき、ふと物言わぬ愛馬のように感じてしまうのは、地図の上を一緒に走り回った時間が長いからだろう。 「鐵馬」(台湾では自転車…

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「大名倒産」「Coda」

浅田次郎の「大名倒産」上下を二日で一気読み。 面白かった~! 隠居の計画倒産の企てとそれはならじと奮闘する藩主の「道理」が人と神を動かしていく壮大な落語。 図書館本だったけど回し読み俎上にあげることにしてメルカリで速攻入手しました。 読後は寿ぎ感が数日残る気配。 ★★★★★ 映画館で観たのはコーダ・愛の歌 Children of Deaf Adults の頭文字をとってCODA。 聾啞家族の中…