さんが書いた連載オカンの一人歩きの日記一覧

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「孤独のグルメ」

バス停には3人がベンチに腰掛けていた。横に長い一人ずつ仕切りがあるタイプだ。私はこの仕切りが好きではない。親切に一人分のスペースを教えてくれているようだが、寝られないためだともいう。 二人が最初のベンチに座り、一人分空けて隣のベンチに一人が座っていた。詰めて座るのが気詰まり感があるのはわかる。バスが来るまでまだ時間もある。だがここはいつも大勢が並ぶので、私はすぐ隣のスペースに座った。 すると…

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「オバア一年目」:東京大神宮から秋葉原

やっと日記。オカンは週に一度はオバアになる。 オバアになるのをどれほど待ち望んでいるかは、周りに孫話が出るようになり、その中で孫に恵まれない日々を過ごした方なら誰もがわかるであろう。 「今度娘に三人目が生まれるのよ。また帰って来るの。もう食費もかかるし、大変よ。」 同僚の愚痴を羨ましい思いで聞いたものだ。 去年私にも孫が授かり、めでたく通い妻ならぬ通いオバアとなった。孫は一年間一度も熱を…

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「スマホに頼りたくなくて」

先日閉まっていたゲートの手前で引っかかった。神宮橋を渡り切った処に若者が一人、道端で何か売っている。 見たことのない手作り品だった。10センチにも満たない可愛い人形だ。若者は針に通した太い毛糸のような糸から、今も目の前で作っている。 買っていく客や彼が作っている様子を動画で撮っているのは、皆外国人だった。若者の隣に座り込んだアジア系の娘が、人形を手に取って、若者にジェスチャーで何かを伝えよう…

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「今しか見られない場所」

突然だった。赤信号で止まったそこにデーンと聳えている。青信号に変わった。走って渡り警備員にタメライなく聞く。 「もっとよく見える場所はありませんか?」 「残念ながら上から見えるような場所はないんですよね。工事用の車が出て来る時、ゲートが開くからその時見れますよ。」 「ぐるっと一周できますか?」 「できますよ。」 「行ってきます。」 「行ってらっしゃい。」 爺様警備員はどこまでも優しい。何…

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「駅ピアノ」

仕事から帰ってレモン味の焼酎飲みながら台所に立つ。仕事は「8時間筋トレ」だと脳に言い聞かせ、仕事に不満を持つなと呪文を唱えるが、効果を発揮するのは職場にいる間だけで、一歩外に出ればどっと疲労が襲う、こちらも60代半ばの老体。 息子に今日食べた「柿の甘酢おろし和え」を作る。80代の同僚が作った。料理が抜群にうまい。 柿をスライスして大根おろしをまぶすのだが、必ずや私の知らない「魔法の粉」を入れ…

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「落ち着く場所」

巫女さんから受け取ったとき、綺麗な文字だと思った。今までだって結構書いてもらっているが、これは美しい。暫しその場で見入ってしまった。 先ほど本殿にはお詣りしているから、これから敷地内をよく見よう。これは息子殿に教わった。善光寺は行ったことがあるのに、私は胎内くぐり程度で、門に登ったことはなかったし、御朱印が10種類以上あるのも知らなかった。 御朱印を頂く前にお参りすると、本で読んだ。御朱印の…

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「オカンの一人歩き」

先日、「母と暮らせば」を見に行ったとき、新宿紀伊国屋の地下でいかに旅の本が沢山出ているかを思い知った。どれも手が届きそうな旅だった。芝居が始まる時間が迫っていたが、そこから離れがたかった。 だが、不思議にそこに書いてある旅に行こうとは思えなかった。既に誰かが行っている。 今度はミュージカル。ブロードウェイミュージカル『コーラスライン』で眠ってしまったから、お口直しだ。 誰にも相談せず、誰…

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「あの日神様はいなかった」

舞台を見てこれほど感動したことがない。 そもそも高額な舞台を見る機会などそんなになかった。それが今月はもう一本チケットを手に入れている。 生協の宅配「パルシステム」のカタログの中に「チケット版」が入って来るようになった。 なんせネット原始人ゆえ、ググってポチとネット購入することに抵抗がある。それが鉛筆嘗めなめ食料品と一緒に申し込める。料金だってまとめて銀行の引き落とし。『コーラスライン』も…

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「太腿と丸いお尻が残った」

「台風の後は地震なんて、怖くなりますね」 「あら、どこで?」 「北海道です」 「北海道のどこ?」 私は答えられなかった。 新聞を取りに表に出るとご近所さんがいたので話した。そこに母親が亡くなって一人暮らしになった男性がやって来た。 「今、旭川の友人と連絡取れたんですが、大変みたいですよ」 「そう。私、旭川に2年いたのよ」 二人は私の知らない地名を言っている。 「これだけ災害が多いと何か準備…