さんが書いた連載友人どのお出かけの日記一覧

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「倒れても生きている」

爺様が一人で新聞を読んでいた。広いテーブルにあんな風に広げたら気持ちいいだろう。 脇には自転車が停めてある。駐車場はロープが張られ閉鎖されているから、ここに来るには自転車か徒歩しかない。 脇を通り過ぎた。自分で作ったような簡単なランチも置いてある。私は並んだテーブルの一つにリュックを下ろした。 もう一人。やはり爺様で、こちらは既設のテーブルや椅子があるのに、折り畳みのゆったりした椅子に腰掛…

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「友達が電話に出ないから」

誰かもっと高齢の方が来たら替わればいい。そう思って私達は優先席に座った。あと一人分席は空いている。 最後に乗って来たのは黒いサングラスを掛けた婆様だった。運転手に何かを聞いた。運転手は丁寧に答えている。長い。 私はそんなこと乗ってから聞かないでよと腹立たしく思いながら見ていた。 婆様は空いている優先席に座った。見ると赤地に白十字のマークをバッグに付けている。 バス内にそのマークの意味を説…

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「待ち合わせ」

突然人混みの中から、彼女が小走りで現れた。 「目立つわあ、その靴。」 16時にJR御茶ノ水駅聖橋口の改札前集合。 東京の駅はどこも出口は一カ所ではない。違う出口を出ると、通りが違ったりしてややこしいことになる。 おまけに聖橋口の前は広場になっていて、待ち合わせの人が多い。 私は出掛ける時は殆どランニングシューズだ。この靴のバネは人には教えたくないレベルで、私が何時までも若い気でいるのは、…

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「友人と二人で東京徘徊」52,7

目が覚めた。まだ三時過ぎだ。ラジオをつける。 「私はバカながん患者でした。大腸癌の次に膵臓癌を、やりました。」 明るい。膵臓癌は発見した時は大抵手後れで治癒率は低い。「大学教授が癌になって分かったこと」という本を書いたらしい。大切な事として三つ挙げていた。食べ物と適当な運動と生き甲斐だったか。 研究している古典「宇治拾遺物語」の中から、幾つか紹介していた。 洪水で流された少年が、水が引いた…

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「日本の中心でパンツを探す」

「じゃあ、女性のパンツもあるかしら」 私たちは居並ぶ商品を、目的を持って見始めた。 「ないわね」 「男性のパンツはあるのに、女性のはない。やっぱり女性は拘りがあるからかな」 「女性がもしここでパンツを買ってるのを見られたら、会社で言われそうだよね」 私たちは「マルエツプチ」なる店に入った。マルエツより小さな街中のスーパーだ。イオン系列のマイバスケットに似ている。 表から見た時は小さな店だ…

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「ある所にはある」

「うっ、どうしよう。店員を呼ぼうか」 私は試着室で文字通りのたうちまわっていた。試着したはいいが脱げない。 カラフルな物が欲しかった。肌色は門外で黒も願い下げだ。 それにしても下着会社はちゃんとリサーチしているんだろうか。何故にこんな夢も希望もない色で作るかなあ。 私は勝手に師匠と呼んでいる年下の友人と上野で待ち合わせていた。例によって早く行く。上野駅には好きな物が揃っている。 サントリ…

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「彼はコーヒーカップを一対買った」

「軽井沢、ナメてた」 見ると先程ガラス張りの待合室にいた縦にも横にもスクスク伸びた若者だった。楽しそうに仲間に言っているが、私は一人震えてもいられず足踏みをする。 高校時代の同級生という微かに甘い匂いがする友人達と集まった。卒業してから数年間は夏に集まり、キャンプした。 還暦のクラス会に集まったのはその仲間が中心だった。私たちはホテルに一泊し、翌日新しく建て替えられた高校や信濃川を眺め、…