江戸歌舞伎何するものぞ

松井今朝子の「東洲しゃらくさし」を読了した。著者は直木賞作家で、本書がデビュー作である。
 時代は寛政年間、上方の人気狂言作者並木五兵衛(後の五瓶)は、。三百両という破格の支度金を用意され、江戸(=東洲)進出を決意する。当時の江戸歌舞伎は、上方歌舞伎と比較して大道具の工夫が足りないと感じていた五兵衛は、先乗りとして、道具方大工のたこ十こと十次と、大道具彩色方の彦三を江戸に送り込むことにした。彦三は、家族を捨て、阿波の貧しい藍百姓の家を逃げ出してきた身であった。しかし、彦三は、無学文盲ではあるが、鋭い観察眼と物事の独特な捉え方を持っており、その才能を五兵衛