オリンピックの身代金

奥田英朗の「オリンピックの身代金」を読了した。著者はミステリー作家で、「空中ブランコ」で第131回直木賞を、本書で第43回吉川英治文学賞等を受賞している。本書は、オリンピック開催で沸き返る昭和39年夏の東京を舞台に、自らの貧しい生い立ちと不合理な社会体制への怒りから、オリンピック開催に抵抗し、国家に対して一人立ち向かう青年の姿を描いたものである。本書では、主人公の島崎国男、警視庁刑事落合昌夫、島崎の同級生でTV局員の須賀忠、島崎が出入りする古書店の娘小林良子それぞれの目を通し、時間を行きつ戻りつしながら、事件の進行を描いている。
 島崎国男は秋田の貧農の