棚田に映る月と銅鐸の輝き

伊集院静の「星月夜」を読了した。著者は直木賞作家で、夫人は女優の篠ひろ子である。本書は、著者が初めて手掛けた推理小説とのことである。
 物語は、浅草寺境内で一カ月間開かれる行方不明者相談所から始まる。その相談所を、孫娘の可菜子の消息を求めて、岩手から老農夫の佐藤康之が訪れ、鑑識課の葛西と皆川が対応するが、成果は得られなかった。一方、出雲の旧家に嫁いだ滝坂由紀子は、元鍛冶職人だった祖父の佐田木泰治が行方不明になっていることを知らされた。泰治は、行方不明になる直前に、鍛冶場で何かを作っていた様子があったが、作られたものは何も残されていなかった。ある日、若洲の