アミルスタン羊は儚い夢を見るのか

米澤穂信の「儚い羊たちの祝宴」を読了した。著者はミステリー作家で、作品としては「日常の謎」を扱った青春ミステリーが多いが、ホラー小説風の作品もあり、芸域は意外と広い作家である。本書は、5篇からなる短編集で、いずれも「最後の一撃(フィニッシング・ストローク)」、すなわちどんでん返しに拘った作品を集めたものである。
 「身内に不幸がありまして」:富豪の丹山家の娘吹子は、大学に入学して初めて実家を出て暮らすことになり、大学では、読書サークルの「バベルの会」に所属した。「バベルの会」は、毎年夏休みに合宿を行うのだが、他人の家に宿泊した経験のない吹子は、その合宿に