深川に生きる哀しみ

宮部みゆきの「堪忍箱」を読了した。本書は、時代小説八篇からなる短編集である。連作短編集のように特定のテーマがあるという訳ではなく、少しホラー風のものからミステリー仕立て、人情譚まで種々の作品が収録されている。
 堪忍箱:本所回向院脇の菓子問屋近江屋に代々伝わる、中を見てはいけないという謎の堪忍箱。それは、ご先祖様が犯した罪の呪を封じたものらしい。堪忍箱が呼び寄せる不幸で天涯孤独となった近江屋の娘お駒は、ある決意をする。
 かどわかし:畳職人の箕吉は、ある日、出入りの料理屋である浜町の辰美屋の息子小一郎から、狂言誘拐を依頼される。どうも小一郎は家出を度々繰