中国残留孤児の帰還

下村敦史の「闇に香る嘘」を読了した。著者はミステリー作家で、本書で2014年第60回江戸川乱歩賞を受賞している。本書では、兄が偽者かもしれないとの疑念に苛まれながらも、真相解明に敢然と立ち向かう全盲の主人公が描かれる。
 物語は暴風の最中に横浜港に到着した一隻の貨物船から始まる。その船に積まれたコンテナの一つには、中国からの密航者が隠れていたが、空気穴が塞がれていたため、二人を除いて全員が死亡していた。横浜港での検査で密航が発覚したが、密航者の一人が逃走に成功する。その男が主人公と関わりを持ってくる。
 69歳で全盲の主人公村上和久は、太平洋戦争中は満州