離れ離れの心中死体

米澤穂信の「真実の10メートル手前」を読了した。著者はミステリー作家で、古典部シリーズや小市民シリーズ等の、いわゆる日常の謎を扱い、青少年を主人公とした爽やか系の青春ミステリーが多いが、実験的な手法を用いた作品も多く、ミステリー自体は本格派である。本書は、前作の「王とサーカス」と同じ、フリージャーナリストの太刀洗万智を主人公とした6篇のミステリーからなる短編集である。
 「真実の10メートル手前」:本編は唯一、主人公が新聞記者時代の話である。万智はかつてインタビューしたことのある早坂真里を取材に、新米カメラマンの藤沢吉成とともに山梨県を訪れる。真理は福祉