神の住む山

 馳星周の「神奈備」を読了した。著者は、ロマン・ノワール(暗黒小説)作家であるが、本書は荒天の御嶽山頂で神を探す少年と、その少年を救助しようとする強力の物語である。
 本書の主人公は、木曽の御嶽の麓の町に住む17歳の芹沢潤である。潤の母親の恭子は、その町で飲み屋を営んでいるが、身持ちが極めて悪く、相手構わず体を開くため、潤の父親も不明である。自転車が唯一の趣味である潤は、自転車競技部のある高校から大学に進学し、トゥール・ド・フランスに出場するのが夢だったが、その夢は中学校卒業の時に儚く消えた。恭子は潤の高校進学を認めず、働いて生活費を彼女に渡す様に命じた