ニューヨーク下町人情譚

 山本一力の「サンライズ・サンセット」を再読した。著者は直木賞作家で、時代小説を主なテリトリーにしている。本書は、ニューヨークを舞台とした、6篇の下町人情噺しからなる短編集である。
 「ホワイト・キャブ」:1931年生まれのマーサ・スミスは3歳年上のノーマンとともに、ウィスコンシン州で牧場を経営していた。二人は竜巻で牧場を破壊される等の苦労を乗り越え、つつましく暮らしをして来ており、唯一の旅思い出は、1972年にステートフェアに出品したスミス牧場のミルクが一等賞になった副賞で、ラスベガスを訪れたことだった。ノーマンはラスベガスのスロットマシンで中当りを当