籠の鳥の羽搏き

 米澤穂信の「いまさら翼といわれても」を読了した。著者はミステリー作家で、古典部シリーズや小市民シリーズ等の、いわゆる日常の謎を扱い、青少年を主人公とした爽やか系の青春ミステリーが多いが、実験的な手法を用いた作品も多く、ミステリー自体は本格派である。本書は古典部シリーズの第六作で、6篇のミステリーからなる短編集である。
 「箱の中の欠落」:神山高校で生徒会長選挙が行われるが、開票の結果、投票用紙が大幅に増えていることが判明する。増えた票が全て落選した候補者に投票されたとしても、選挙の結果は変わらないのだが、犯人として1年生の選挙管理委員が疑われ、辛い立場