美人弁護士の落ちた陥穽

 柚月裕子の「合理的にあり得ない-上水流涼子の解明-」を読了した。2008年に、第7回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞してデビューしたミステリー作家である。本書は、陰謀に嵌められて弁護士資格を失い、探偵エージェンシーを経営する上水流涼子の活躍を描いた連作短編集である。
 本書のヒロインの上水流(かみづる)涼子は、第四話で明かされるが、親の代から顧問弁護士をしていた巨大企業グループのお家騒動に巻き込まれ、身に覚えのない傷害罪で有罪判決を受けて法曹資格を失う。その陰謀を企んだのが東大卒でIQ140の貴山伸彦であることを突き止めた涼子は、貴山を助手として