ほろほろと空を泣かせて花薄
砂子吹く丘を転げて実浜茄子
大楡を借りて老蝶雨宿り
静穏の水輪ひろがり桐一葉
蛇行せし釧路湿原秋走る
終生を風に散らして鳳仙花
片雲の行方も知らぬ草雲雀
漂泊の身を遠ざけて秋の蝉
北向きの入江に傾ぐ月の秋
上窓へ鯖雲二匹泳ぎたる
方寸の厨さだかに秋めけり
ありふれた戯言語る赤のまま
磯小屋に脚を抱へる秋の蠅
月頼る白き墓標の掠れ文字
方丈に座して巻かざる秋簾
再訪の関路を西へ沢桔梗
水面に颯爽と翔つ胸の月
サロベツの果に契りを風の色
隅々に八月の風吹き渡る
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