行きずりの人に非ずと吾亦紅
風葬の諸島さだかに月祀る
名月を二様に見やる夫婦かな
言ひかけて雨月の傘を畳み込む
月白や袖の解れを隠しおく
ちぎれ雲飛ぶ秋川に中州あり
書きかけの思ひ乱るる野分雲
海北に据ゑて残月波に消ゆ
野の涯の空を見上げて花紫苑
缶ビール翳す月見の翁ゐて
よひやみに硯海の水動かざる
崖下の野菊おいでと渓遡行
石段につまずき正す荻の風
露の世にほぼ一端の澪標
風にしてまた不知火の身となりぬ
矍鑠の言葉を称え菊の友
ほろ苦き胸裏吹かるる風の色
求道の歩みそろりと遠案山子
初紅葉と言ふ君に似た純情
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