久々のノワール

 馳星周の「暗手」を読了した。著者は、ロマン・ノワール(暗黒小説)作家である。本書は「夜光虫」の続編で、イタリアに渡った加倉昭彦を主人公としたノワール小説である。
 殺人を重ねたために居場所をなくして台湾を捨てた加倉昭彦は、顔と名前を変え、イタリアのミラノで何でも屋として暮らしていた。加倉は、殺人以外はどんなに汚い仕事でも請け負うため、黒社会では、暗闇から伸びてくる手を意味する「暗手(アンショウ)」と呼ばれていた。その加倉の許に、彼の本業であるサッカー賭博に関連した依頼が舞い込む。その仕事とは、ミラノから車で一時間半ほどの田舎町ロッコのサッカークラブに在