90年の歳月を生きてきた母の手を
私の手に そっとのせた
水仕事も、畑仕事も忘れた手
ずいぶん細くなったその指は
血管まで透き通って
ただ美しく、白く、静かに5本”横たわって”いた
労苦の跡だろうか、
関節が曲がって戻らない中指。
記憶の中の母の指は
節くれ立ち、忙しなくいつも握り、
あるいは縫い、なにかしか作業していて、
この季節になると赤く腫れて割れ
白い布バンが巻かれない日はなかった
この手に撫でられ、抱かれ、いっぱい支えられて
私は今のわたしになったのだ・・・。
傷つけないようにそっと丁寧に
母の爪を切り、整える
母は無防備