まだ雪を見ずこれほどの初時雨
冬枯の鈍くはみ出す草の翳
牡丹焚く狼煙となりぬ五輪の書
揉み手して古螳螂と相対す
北窓を塞ぐをんなの力瘤
土塊にもたれ青女の旅枕
黙々と初雪の降る幾山河
暮らせどもなほ裂帛の影冴ゆる
愛日の痩畑仕舞ふ隠れ里
笹鳴の声ちりぢりに日を落す
薄れ日の山彦浅き冬を曳く
正道を説く焼鳥を持つ翁
裸木を深々と抱く夜のしじま
午後二時の仔猫をあやす冬の蠅
優しさをそっと伝えて日向ぼこ
白息の追ふて消えゆく恋慕かな
有閑を風致に譬え枯野人
熊穴に入る寸心の深情け
綯交ぜの虚実を知りて木の葉髪
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