【本の紹介】『火定(かじょう)』 澤田瞳子 PHP研究所

長屋王の変により藤原四兄弟は政治の実権を握ったが、天然痘により相次いで死去、人々は長屋王の呪いであると恐れおののいた…

このくだりは奈良時代の有名な一節ですが、案外さらっと語られることが多いです。
言われてみれば、天然痘が流行してしまえば、単に貴族4家の滅亡だけで済んだはずがありません。

高熱のあと、全身を水疱が覆い、果ては穴という穴から血を吹き出して死に至る恐怖の病。
しかもそれは猛烈な勢いで感染していきます。

この作品で扱われているのは、平城京を地獄と化し、なおも猛威を全国に広げて行かんとする天然痘と、医術の限界を知りながら必死に患者たちと向き