吉田一彦「『日本書紀』の呪縛」

 「日本書紀」は我が国の最初期の書物であり、日本創造の神話と天皇による政治の歴史が記載された書物であるが、歴史的事実とは異なる意図的な創作がなされているという。日本書紀は政治的な書物であり、天皇による統治と天皇を中心とする政権を担う氏族を正当化する意図を持って書かれている。日本書紀に書かれたことが唯一の正史となり、現在、及び未来を規定する権威となった。

 日本書紀の記述を前提として、そこに書かれていないことを記載した書物や、日本書紀の記載と反することを記載した書物も書かれた。まさに書物の戦いである。自分の氏族の盛衰がかかっているので、政争そのものである