封印を解かれた名作

 秋吉理香子の「ジゼル」を読了した。著者はミステリー作家である。本書は、「ジゼル」の主役を巡るバレエ団内での愛憎、嫉妬と、連続して起こった不可解な死を描いたサスペンス小説である。
 本書の主人公の如月花音は、東京グランド・バレエ団に所属する19歳の団員である。花音は同期入団で仲の良い斎藤絢子、園村有紀子および太刀掛蘭丸と一緒に行動することが多いので、四人は周囲から「仲良しカルテット」と呼ばれている。セクシーな絢子は、男勝りで情熱的である。皆より四歳年上で落ち着いている有紀子は端正なクールビューティーである。同期で唯一人の男性ダンサーである蘭丸は、日本人離