連載:日常3

「恋する60代」

「ほら見て」
友人はそう言って首元をはだけた。ブラの肩紐が見えた。薔薇の刺繍が連なっている。
「私の一日分の稼ぎくらいしそうね。」
「するわね。」

なぜそんな話になったか。私達より20歳近くも高齢の共通した知人が、最近また綺麗になったからだ。

「彼女は女を捨ててないものね。カレがいるっていうし、お洒落だし、背筋だってピンと伸びてる。最近またちょっと痩せたわよね。」
「そうよね。幾つになっても女を捨てちゃいけないのよ。ベージュばっかじゃダメ。」

脳が老化しない方法の一つに恋が挙げられるが、こればっかりは相手がいることなので、自分一人ではどうにもならな