残雪の後立山連峰

 馳星周の「蒼き山嶺」を読了した。著者は、ロマン・ノワール(暗黒小説)作家であるが、最近は山岳小説等、異なったジャンルの作品が増えている様である。本書は、刺客に追われる公安刑事が、かつて大学の山岳部で一緒だった山岳ガイドとともに、残雪期の後立山連峰を縦走する姿を描いた山岳冒険小説である。
 元長野県警山岳遭難救助隊員の得丸志郎は、交番勤務をを命じられた時に迷わず辞表を書き、白馬村観光課の顧問を勤めながら、時々山岳ガイドの仕事を引き受け、細々と食いつないでいる。得丸が、早春の白馬岳の白馬鑓温泉付近の残雪の状況をチェックしている時、無謀と思われる中年の登山者